公益財団法人しまね産業振興財団では、島根県内ものづくり産業の生産性向上・新サービスや新製品の創出を図るため、助成事業・伴走支援事業によるAI・IoT等のデジタル技術の活用支援を行ってきました。ここではその事例をご紹介します。
「LoRa無線利用しためっき前処理装置水洗槽のpHモニタリング」
1.取組概要
めっき前処理は製品の良否を左右する最も重要な工程の一つであるが、その工程は、脱脂、酸洗い、活性化処理、水洗とpHの大きく異なる槽からなる。そのため工程間を結ぶpHの管理は重要な要素であり、これまで定期的に手作業でpH値を確認していた。しかし、手作業では連続的な液性の変化の挙動は把握できていないことや、作業員の時間を要する。今回の取組では、pH値を自動測定化し、そのデータをIoTの無線通信の一つであるLoRa無線にて別部屋のパソコンにデータ転送してデータ表示および保存を行う環境の整備を行った。
2.設備の概要
今回、この中の脱脂後水洗槽、酸洗い水洗槽、活性化処理後水洗槽の3カ所にpH電極を設置し、操作盤付近に指示調節計、装置近くの壁面にLoRa無線機(子機)、別室にLoRa
無線機対応IoTゲートウェイ(親機)を設置し、指定のパソコン上にデータ表示およびデータ保存を行うように設備の設置と設定を行った。
3.設置後の状況
データは、前処理装置付近に設置されたLoRa無線機子機から、別室に設置したLoRa無線機対応IoTゲートウェイを介して指定したパソコンのモニター上にリアルタイムデータが表示される。データは各槽を10秒間隔で24時間データ収集をしている。pH測定値には上下限のアラーム設定(しきい値)を行い、異常があれば記録が残る仕組みとなっている。
4.効果
(1)機器設置前
ポータブル式pH測定器による手作業測定。1日7回の前処理作業前後にpH測定を行う。1回の測定要する時間は1分30秒程度であることから、1日あたり1分30秒×7回×2回 → 21分/1日 を要していた。
(2)設備設置後
今回の設備設置により、1回あたりの測定(値の確認作業)は15秒程度となった。
15秒×7回×2回 → 3分30秒に改善した。一日あたり17分30秒程度の効率化と、連続したデータの取得と値の信頼性を確保した。