今年の1年生は、27名でのスタート。この学校の教室サイズではほぼマックスの人数です。
今まで公立の小学校で教えていた私にとっても新鮮だったのが、シュタイナー学校には教科書がない、ということ。子ども達は先生のお話を聴き、イメージをふくらませ、絵や文字にしていきます。グロッケンを響かせ、ろうそくに灯をともすと、そこはもう教室ではなく、お話の世界なのです。
1年生一番初めのエポックは、文字のエポック。小人たちの冒険のお話を聴き、途中で出てくる火や水の姿を絵に描き、そこから生まれるフォルム(かたち)をとらえて文字にしていきます。ブロッククレヨンで絵を描くには、手や指の力と繊細な動きが必要で、1年生の子ども達にとってはなかなか大変なしごとです。どの子も真剣にクレヨンを動かします。そうして「火」という文字を学んだあと、ある子はおうちで「火はな、めらめらするから、火なんやで一」と語ったそうです。その子はたくさんお話するタイプの子ではないのですが、ひとつの文字をめいっぱい感じて、しっかりと自分の中に取り込んでいることがわかって、私も嬉しくなりました。
ゴールデンウィーク明けからは、専科の授業が始まりました。メインレッスンとおにぎりタイムのあと、専科の先生との英語や中国語、音楽、オイリュトミーなどの授業があります。担任との体育や練習の時間もあるので、その時間を使って週1回、水彩をしています。
初めての水彩の時間も、お話から始まりました。
「にじの子のひとり、きいろちゃんは、お空から地上を眺めているうちに、つるっとすべって、とぷん!と水たまりに落ちてしまいました。するとその水たまりは、黄色い水たまりになったのです。それを木の上から見ていたリスさんが、木からおりて水たまりのところまで行きました。きれいな黄色を見て、リスさんはきいろちゃんを連れて行きたくなり、ふさふさのしっぽをそっと水たまりに入れました…」。
黄色い水たまり、と聞いて、子ども達は「これか一!」と、テーブルの上の黄色い絵の具のびんを見ます。リスさんのしっぽは、筆の先です。筆の先がどうなっているのか気になって、ばさばさとさわっていた子に「あっ!リスさんが痛がってるよ!」というと、あわてて手を引っ込めます。
こんなふうに、お話の世界に入り込める時期は、長い人生からみると、ほんとうに短い間です。子ども達とともに、今しか持てないこの豊かな時間を大切にしたい、と思っています。
<<学校報『プラネッツ』2019年夏号より>>