新しい価値をつくる、デザインマネジメント
【第三章】中小零細企業だからこそできる!「戦略的デザインマネジメント」 ~基礎編③~
現在の日本には、優れた技術や質の高い製品・サービスなどが数多く普及しています。そこには長い年月をかけての努力と成果があり、海外の国々と比較してもトップレベルといえるでしょう。しかしながら、近年、欧米諸国で活発化している企業のように、高技術や高品質はもちろん、感性・創造性から生み出される戦略を行う国内企業はほとんどありません。その戦略こそが「デザインマネジメント」なのです。デザインマネジメントとは何か?デザインマネジメント専門家である草野が段階的に解説していきます。
「戦略的デザインマネジメント」とは
現在注目されているデザインマネジメントを用いた経営手法のほとんどは、「戦略的デザインマネジメント」のことを指しています。初期のデザインマネジメントの定義は、狭い意味でのデザイン(狭義のデザイン)をマネジメントすることとされていました。つまり、クライアントの依頼に合わせて、デザイナーのタスク、工程を把握し、理想の成果物を出すために全体のマネジメントをする、ということです。
生粋の美術系デザイナーは、ロジカルな思考、判断を主体とする会社経営の分野を苦手とする人が多い傾向にあります。良い物を作ることには誰よりも熱意があり情熱的ですが、財務の問題になると興味が無い人が少なくありません。
 
一方、デザインに苦手意識を持っている経営者の方(経営側の役割を担う方)も多いのではないでしょうか。デザインは感性の領域になり、コストなどの計量化ができにくい性質(側面)があります。デザイナーの良し悪しは、製品(商品)サービスを実際に市場にだし、その結果を見ない限り明確な基準を設けられないため、財務管理の手法が使えないのです。この状況ではイノベーションはおろか通常の製品(商品)サービスを完成させることもできません。
 
このようにお互いを理解し合えない両者のコミュニケーションにおいて、円滑化や橋渡しをすることが広義な意味(広義なデザイン)でのデザインマネジメントの大きな特性(役割=戦略)です。
デザイン思考と経営戦略の密接な関係
要約すると、デザインマネジメントから、さらにデザイン部門やデザイナー側に入り込み、企業の戦略の中心としてデザインマネジメントを導入することです。
そのためには、デザインを評価できる経営者、つまりデザイン思考と経営能力を併せ持つ人(役割)が不可欠です。脱コモディティ化や独自性をつくりだすためにも、デザイン思考と経営戦略は密接な関係になる必要があります。
「戦略的デザインマネジメント」を実践した経営者たち
スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が創業したAppleや、盛田氏が創業したソニーなどは、経営者自らがデザイン思考を持っていたため、おのずと「戦略的デザインマネジメント」を導入していたと言われています。これらの国内外の大手企業が次々に破壊的イノベーションを起こしたことから、破壊的イノベーションと戦略的デザインマネジメントの関係性が注目されました。戦略的デザインマネジメントを導入するためには、デザイナーの感性、つまりデザインの善し悪しを判断するためのデザイン思考が必要不可欠であり、それに準ずる考え方が、近年重要とされています。
中小零細企業こそイノベーションを生む
中小零細企業は大企業よりも人数が少なく、デザインマネジメントの導入に比較的労力がかかりません。すでにデザインマネジメントを導入して目指すべき組織体制に近い環境状態になっているということです。
 
そもそもデザインマネジメントの目指すべき究極の状態は、デザインの重要性を理解し、経営戦略としてデザイン経営を実現することです。(デザイン経営を現場レベルまで浸透させる)そうすることでデザイン・技術・営業などの各部署が一体となり、コンセプトに基づいた製品(商品)サービスを市場に出せるようになります。大企業では、それぞれの部門が独立しており、目標数字なども部署ごとの縦割りで思考してしまいがちですが、中小零細企業にはそれぞれの部署は分かれていたとしても、部署間の距離が非常に近く、複数のポジションをこなしている人もいます。
まして、部長や課長などの管理職の人は、より現場に近い立ち位置で働いている人が多いと思います。
 
このように複数のポジションをこなす人や、部署の垣根を超えて仕事をする人にとっては、デザインマネジメント、デザイン思考を違和感なく取り入れられる可能性が高いため、中小零細企業こそこれらを導入する素地が整う企業が多いといえます。(大手企業よりコンパクトなので導入しやすい)
「戦略的デザインマネジメント」成功の鍵は経営者に!
中小零細企業のデザインマネジメントでは、部署間が一体となることが重要だと上述しました。このときすでにデザインマネジメントを実践済みの環境にあたるからです。しかし、それだけでは大きな成果には繋がりません。
 
中小零細企業のデザインマネジメントの一番の成功の鍵は、トップである経営者がデザイン思考を身につける、あるいは経営指針として示すことにあります。
経営者はデザイン思考を受け入れ、デザイン思考が発揮されやすい環境を整える必要があり、時には今までの伝統すらも変える必要が出てくるかもしれません。
 
全世界で100年以上存続している会社は、約3,000社あることがEvernoteの調査でわかりました。そのうちの80%は日本の企業だそうです。中には200年以上続く会社もあります。企業が長く存続できる理由は、時代に合わせてビジネスモデルを柔軟に変更することができていたからです。そのことから、日本人は変化に対応する能力が備わっていることが分かります。
 
日本人にはデザイン思考の基本となる、「洞察」「観察」「共感」というプロセスを繰り返すことができる企業文化が根付いていました。つまり、商品・サービスをお客様の目線で考えられるということです。デザイン思考とは本来、日本人向きの思考の型であり、以前から無意識下で同じ思考の型をしていた人が多いのかもしれません。
次回の『新しい価値をつくる、デザインマネジメント』  
【第四章】地雷除去を無人化に!デザインが社会問題の解決へ ~基礎編④~
草野  紀親(くさの のりちか)  
デザインマネジメント専門家
株式会社かたちなきもの 代表取締役
VALUE LABO Founder 
 
1973年4月22日生まれ、福島県出身。デザインマネジメント専門家。ブランディング・クリエイティブ業界での実務経験25年。ブランドコンサルファーム、クリエイティブプロダクション、広告代理店にて、デザインマネジメントの知識と経験を養い、広義なデザイン(人、環境、モノ、仕組み、問題提起、コミュニケーションツール) のデザインマネジメントのあり方と技術を磨く。その後、ブランドコンサルファームの創業立ち上げ支援、最高執行責任者を経て、株式会社かたちなきものを設立。後進の育成や、日刊工業新聞社、中小企業、大企業、地域、研究機関、大学など、各方面で講師活動も精力的に行っている。
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