新しい価値をつくる、デザインマネジメント経営
【第一章】デザインマネジメントを知る ~基礎編①~
現在の日本には、優れた技術や質の高い製品・サービスなどが数多く普及しています。そこには長い年月をかけての努力と成果があり、海外の国々と比較してもトップレベルといえるでしょう。しかしながら、近年、欧米諸国で活発化している企業のように、高技術や高品質はもちろん、感性・創造性から生み出される戦略を行う国内企業はほとんどありません。その戦略こそが「デザインマネジメント」なのです。デザインマネジメントとは何か?デザインマネジメント専門家である草野が段階的に解説していきます。
デザイン」と「マネジメント」
私たちが日常的に使う「デザイン」には、服のデザイン、カフェの内装デザイン、ロゴ、広告などがあり、意匠や形態といった視覚的な表現の意味で使っている人が多いでしょう。
マーケティング専門用語の「マネジメント」は一般的に、資源や人的資本、資産、時間、リスクを把握・管理することで効果を最大化する手法のことを指します。2009年に「もしドラ」(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)初版が発行され、その後爆発的な人気と拡がりにより、今では多くの方々がご存じだと思います。
「デザインマネジメント」とは?
「デザインマネジメント」という言葉をご存じでしょうか?
おそらく多くの方々は、まだ「デザインマネジメント」という言葉すら知らない方も多いことでしょう。また、デザインを経営に直接結びつけて活用できる方々も、ほんのわずかです。

デザインマネジメントの概念は15年以上前からあり、
“ デザインマネジメントとは、デザインの創造性を生み出す環境づくり、マーケティングを通してユーザーの価値観、好みを継続的に把握する仕組みづくりなど、ヒト・モノ・カネ・情報・時間を最大限に活かし、経済効果を上げる諸活動である ”
と定義されています。(佐渡山 安彦 氏/ 2002年デザインマネジメントとは 引用)
 
つまり本来の意味は、単なる視覚的表現にとどまらず、デザインの領域から環境・仕組みづくりを通して、経済効果に繋げる活動のことを言います。
なぜ「デザインマネジメント」が注目されているのか
以前の日本は、多くの企業が技術を中心とした経営手法であり、“精度の高い技術で、良い製品をリーズナブルに作る”ことで利益をあげることができました。
しかし今日にかけては、バブル崩壊などの不況から、“コストを下げて多くの人に買ってもらう”という経営手法へと移行され、現在も互いにすり減ってしまうような企業同士のコスト削減競争が続き、撤退する企業も少なくありません。
そのような不況の中、なぜか売り上げが上がっている企業があります。
なぜ、
iPhoneは売れたのか?
アウディは売り上げを伸ばしているのか?
スターバックスはいつも繁盛しているのか?
これらの企業は、コスト削減や効率化に専念しているわけではないのに、業績が伸びています。その理由の一つとして、「デザイン」を経営の中心においた手法(デザインマネジメント)を取り入れていることが注目されています。
 
数十年前からあった概念「デザインマネジメント」「デザイン思考」「デザインシンキング」が、なぜ今頃になってビジネス領域において重要性が強く謳われ、注目されているのか。その背景として、日本の場合、従来の経営手法による経済効果が薄れてきたことに、多くの人が気づき始めたことが原因だと考えられます。
 
コスト削減競争が必要とされるような企業は、グローバル化により中国やラオスなどの後進国の企業とも競争しなければなりません。多国籍企業だけでなく、中小企業でさえ、技術や販売方法を中心とした経営手法から何らかの問題を解決するために思案するデザインを中心とした経営戦略「デザインマネジメント」の導入が、これからの企業とって必要不可欠な考え方となりつつあります。
 
「デザインマネジメント」とは、いわば、「絶対的価値」を生み出す経営戦略の一つなのです。
 
次章では、これらの有名企業の戦略も含め、いかにして企業がデザインマネジメントをイノべーションに繋げているかについて紐解いていきたいと思います。
デザイン× 経営の時代へ
私とデザインの付き合いは実に25年になります。ブランドコンサルファーム、クリエイティブプロダクション、広告代理店など、いくつか会社を渡り歩きながら経験を積み、いろいろなことを学ばせていただきました。
私がそもそもこの仕事を始めたきっかけは、「かっこいいものがつくりたい!」「かっこいいものをみんなに見てもらいたい!」という「なんとなく」という思考停止にありがちな漠然としたものだったのを覚えています。デザインの性質上、どうしても視覚的要素から捉えてしまいがちですが、私がデザインは見た目だけではないことに気がつけたのは、まったくやったことのない新規事業を立ち上げるという大きな壁にぶち当たったのがきっかけでした。私はこの大きな経験を経て「デザイン」というものに対しての考え方がガラリ変わりました。それが私と「デザインマネジメント」との運命的な出会いになります。
次回の『新しい価値をつくる、デザインマネジメント経営』
【第二章】 デザインマネジメントがイノベーションを起こす ~基礎編②~
草野  紀親(くさの のりちか)
デザインマネジメント専門家
株式会社かたちなきもの 代表取締役
VALUE LABO Founder 
 
1973年4月22日生まれ、福島県出身。デザインマネジメント専門家。ブランディング・クリエイティブ業界での実務経験25年。ブランドコンサルファーム、クリエイティブプロダクション、広告代理店にて、デザインマネジメントの知識と経験を養い、広義なデザイン(人、環境、モノ、仕組み、問題提起、コミュニケーションツール) のデザインマネジメントのあり方と技術を磨く。その後、ブランドコンサルファームの創業立ち上げ支援、最高執行責任者を経て、株式会社かたちなきものを設立。後進の育成や、日刊工業新聞社、中小企業、大企業、地域、研究機関、大学など、各方面で講師活動も精力的に行っている。
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