今日は「職業能力開発基本計画」についてです
「職業能力開発基本計画」は国キャリ、2級技能士試験ともによく出題されますので、受験前に一度概要をつかんでおくとかなり助かります。
 
内容自体は難解な訳ではなく、社会情勢を正しく理解しているかを確認するための問題とも言えますので、一言一句きっちりと覚えるのではなく、社会情勢はどうなんだ、という大枠での把握、というよりは報告書と自分の認識とが合っているかの確認をすると良いと思います。

また、2025年度は第11期計画の最終年度であり、第11期の課題と第12期への取り組みが見えてきている時期でもあります。その点を考えて、今回は2026年からの第12期計画(まだ、出ていませんが・・・)に視点をずらした形で説明します。
目次
 
1.【2025年12月最新】キャリコン必見!「第12次職業能力開発基本計画」の潮流と対策まとめ
2.第11次職業能力開発基本計画
3.【総括】「第11次職業能力開発基本計画」の振り返り
4.(コラム)キャリアコンサルタントを支える制度と政府の取り組み
【2025年12月最新】キャリコン必見!「第12次職業能力開発基本計画」の潮流と対策まとめ

現在(2025年12月)、国の雇用施策は大きな転換点を迎えています。現行の第11次計画は今年度で終了し、いよいよ2026年4月から「第12次職業能力開発基本計画」がスタートします 。

 

本記事では、厚生労働省の「令和8年度(2026年度)予算概算要求」や最新の議論を基に、次期計画の全貌と私たちへの影響を解説します 。


1. 次期計画(2026~2030年度)の「3つの重点テーマ」


第12次計画は、政府の「三位一体の労働市場改革」を実装する実行計画と位置づけられています 。特に以下の3点が柱となります。

 

「生成AI」を含む実践的デジタル人材の育成 これまでの「知識習得」から一歩進み、「現場で使える」スキルの習得が重視されます 。座学だけでなく、企業現場での実習(OJT)を組み合わせたモデル事業に新規予算が要求されています 。


「ミドルシニア」へのキャリア支援強化 40代・50代の活性化が急務です 。企業内での定着だけでなく、「セカンドキャリアに向けたリ・スキリング」や社外転進も含めた相談ニーズへの対応が求められます 。


「ジョブ・カード」と「job tag」の統合活用 マイナポータルと連携した「デジタル・ジョブ・カード」の活用が本格化し、個人のスキルを可視化して転職市場で評価される仕組み作りが加速します 。

 

2. 令和8年度(2026年度)助成金・給付金のトレンド


予算配分の特徴は、「座学から『実践』へ」、そして「『ミドルシニア』の活性化」です 。

 

企業向け:人材開発支援助成金 「生成AI」を業務にどう組み込むかという「実践の場」を提供する訓練への助成が強化される見込みです 。また、概算要求の目玉として「中高年齢層のセカンドキャリアに向けたキャリアプランニング支援」に約42億円が計上されており、ミドルシニア向け施策の新設・拡充が予測されます 。


個人向け:教育訓練給付 「デジタル・グリーン・建設」などの成長分野において、給付率が高い「専門実践教育訓練給付」の指定講座が増加する見通しです 。

 

3. キャリアコンサルタントに求められる変化と対策


第12次計画では、支援の軸足が「職場適応」から「市場価値向上・主体的なキャリア自律」へとシフトします 。私たちには以下の準備が求められます。

  1. 「労働移動」前提の支援: 「転職=ネガティブ」ではなく、成長産業への移動を支援する情報収集を強化する 。
  2. 生成AIスキルの習得: クライアントに助言するため、支援者自身がAIを活用できる状態にしておく 。
  3. 最新情報のキャッチアップ: 来年度の助成金変更(特にミドルシニア・実践AI関連)を予習し、企業や個人への提案に備える 。

まとめ


2026年は、日本の雇用システムが「ジョブ型・自律型」へ移行する決定的な年となります 。制度の「正確な情報」を提供しつつ、変化に戸惑うクライアントに寄り添う「伴走力」を発揮していきましょう 。

第11次職業能力開発基本計画
第11次職業能力開発基本計画はそれっぽいけど計画で示されていない内容が間違いの選択肢として出されていることから、過去問で覚えるよりは計画の概要で全体像をつかむ方が解きやすい分野です。 このメルマガで概要の全文を掲載していますので、本番まで1度はゆっくりと読むことをお勧めします。

「能力開発基本調査」は「労働経済の分析(労働経済白書)」「第11次職業能力開発基本計画」と並んで時事問題で出題される頻度が高いものなので試験前には1度は調査結果の概要をざっと読んでおいた方が良いと思います。 

まず第11次職業能力開発基本計画 を入手しましょう
 
第11次職業能力開発基本計画概要(PDF資料)https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000760054.pdf
第11次職業能力開発基本計画(PDF資料)https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000760059.pdf
 
第11次職業能力開発基本計画(令和3年度~令和7年度)(概要
新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル技術の社会実装の進展労働市場の不確実性の高まり、人生100年時代の到来による労働者の職業人生の長期化など、労働者を取り巻く環境が大きく変化していくことが予想される中で、企業における人材育成を支援するとともに、労働者の主体的なキャリア形成を支援する人材育成戦略として、職業能力開発施策の基本的方向を定める。
産業構造・社会環境の変化を踏まえた職業能力開発の推進
Society5.0の実現に向けた経済社会の構造改革の進展を踏まえ、IT人材など時代のニーズに即した人材育成を強化するとともに、職業能力開発分野での新たな技術の活用や企業の人材育成の強化を図る
  • 教育訓練給付におけるIT分野の講座充実に向けた関係府省の連携、公的職業訓練におけるIT活用スキル・ITリテラシー等の訓練を組み込んだ訓練コースの設定の推進
  • オンラインによる公的職業訓練の普及、ものづくり分野の職業訓練におけるAR・VR技術等の新たな技術の導入に向けた検討
  • 企業・業界における人材育成の支援、中小企業等の生産性向上に向けたオーダーメイド型の支援の実施
  • 教育訓練の効果的実施等に向けた企業におけるキャリアコンサルティングの推進
労働者の自律的・主体的なキャリア形成の推進
労働市場の不確実性の高まりや職業人生の長期化等を踏まえ、労働者が時代のニーズに即したスキルアップができるよう、キャリアプランの明確化を支援するとともに、幅広い観点から学びの環境整備を推進する
 
  • 企業へのセルフ・キャリアドックの導入支援夜間・休日、オンラインを含めた労働者個人がキャリアコンサルティングを利⽤しやすい環境の整備キャリアコンサルタントの専門性の向上専門家とのネットワークづくりの促進、企業の人材育成の取組への提案等に向けた専門性の向上
  • IT利活⽤等の企業横断的に求められる基礎的内容を中心とする動画の作成・公開、教育訓練給付制度の対象講座に関する情報へのアクセスの改善
  • 教育訓練休暇や教育訓練短時間勤務制度の普及促進、社内公募制などの労働者の自発性等を重視した配置制度の普及促進
労働市場インフラの強化

中長期的な日本型雇用慣行の変化の可能性や労働者の主体的なキャリア選択の拡大を視野に、雇用のセーフティネットとしての公的職業訓練や職業能力の評価ツール等の整備を進める

  • 地域訓練協議会等を通じた産業界や地域の訓練ニーズを反映した職業訓練の推進、産学官が連携した地域コンソーシアムの構築・活用促進
  • 技能検定制度・認定社内検定の推進ホワイトカラー職種における職業能⼒診断ツールの開発日本版O-NETとの連携
  • ジョブ・カードの活用促進
  • デジタル技術も活⽤した在職者・離職者、企業等への情報発信の強化
全員参加型社会の実現に向けた職業能力開発の推進

希望や能力等に応じた働き方が選択でき、誰もが活躍できる全員参加型社会の実現のため、すべての者が少しずつでもスキルアップできるよう、個々の特性やニーズに応じた支援策を講じる

  • 企業での非正規雇用労働者のキャリアコンサルティングや訓練の実施、求職者支援訓練の機会の確保
  • 育児等と両⽴しやすい短時間訓練コースの設定、訓練受講の際の託児⽀援サービスの提供の促進
  • 就業経験の少ない若者に対する⽇本版デュアルシステム※や雇⽤型訓練の推進、地域若者サポートステーション※におけるニートや高校中退者等への支援の強化
  • ⾼齢期を⾒据えたキャリアの棚卸しの機会の確保、中⼩企業等の中⾼年労働者を対象とした訓練コースの提供
  • 障害者の特性やニーズに応じた訓練の実施、キャリア形成の支援
  • 就職氷河期世代外国人労働者など就職等に特別な支援を要する方への支援
※日本版デュアルシステム若年者や職業能力形成機会に恵まれなかった者を対象に、企業実習又はOJTとこれに密接に関連し た教育訓練機関におけるOFF-JTを組み合わせにより実施し、修了時に能力評価を行う訓練制度です。 雇用・能力開発機構及び都道府県において実施されています。

 ※地域若者サポートステーション(愛称:「サポステ」)
働くことに悩みを抱えている15~49歳までの皆さまを対象に、就労に向けた支援を行う機関です。厚生労働省が委託した全国の若者支援の実績やノウハウがある民間団体などが運営しており、全国の方が利用しやすい「身近に相談できる機関」として、全ての都道府県に設置しています 

【総括】「第11次職業能力開発基本計画」の振り返り

~「リカレント」から「リスキリング」へ、激動の5年間が残したもの~

2025年12月現在、私たちは大きな節目の時を迎えています。今年度(2025年度)をもって、5年間にわたる「第11次職業能力開発基本計画」がその役割を終えようとしています 。

 

来春2026年4月から始まる「第12次計画」への移行を目前に控え、本記事では第11次計画が目指したものを振り返りながら、この5年間でキャリア支援の現場がどう変化し、何が次代への課題として残されたのかを解説します。

 

1. 第11次計画のキーワードは「リカレント教育」と「職場適応」

振り返れば、第11次計画の期間は、人生100年時代を見据えた「学び直し」が社会に浸透し始めた時期でした。

  • 支援の軸足:「職場適応・悩み相談」 この期間、キャリアコンサルティングの現場では、労働者がいかに現在の職場に適応するか、あるいは職場の人間関係や将来への漠然とした不安(悩み)をどう解消するかに重きが置かれていました 。

     

  • キーワード:「リカレント教育」 社会人の学び直しとして「リカレント教育」という言葉が定着しました。しかし、その多くは知識のインプットや、大学・教育機関での座学が中心であり、デジタル分野においても「知識の習得」が主眼でした 。

     

  • 必須ツール:「職務経歴書(紙ベース)」 自身のキャリアを棚卸しするツールとしては、依然として紙ベースやアナログな職務経歴書が主流であり、データとして活用可能なインフラ整備は途上の段階にありました 。

     

2. 「第11次」から「第12次」へ:見えてきた課題と変化

第11次計画は、働く人々に「学ぶことの重要性」を気づかせる啓蒙期間であったと言えます。しかし、技術革新と人手不足が加速する中で、「単に学ぶだけでは足りない」という課題も浮き彫りになりました。これが、次期計画への大きな転換点となっています。

  • 「知識」から「実践」への深化 第11次では「デジタル知識を知っている」ことがゴールでしたが、現場からは「知識があっても業務で使えない」という声も上がりました。この反省から、次は「現場で使える(実践)」スキルへとフェーズが移行します 。

     

  • 「適応」から「市場価値向上」へ 組織内での調整や適応を重視した第11次に対し、今後は「市場価値」を意識した主体的なキャリア形成、つまり「いつでも動ける(労働移動)」状態を作ることが求められるようになりました 。

     

  • 「スローガン」から「実装」へ 政府が掲げる「三位一体の労働市場改革」についても、第11次期間中は方向性を示すスローガン的な意味合いが強かったものの、これからの5年間はその具体策を社会に「実装」する実行フェーズに入ります 。

     

3. 2026年に向けた「キャリア支援」の進化

第11次計画が終了することで、日本の雇用システムにおける「メンバーシップ型」の色合いは薄れ、「ジョブ型・自律型」への移行が決定的になります 。

 

私たちが慣れ親しんだ「職場定着のための相談」や「紙の経歴書」といった第11次時代の常識は、2026年度以降、急速に過去のものとなっていきます。 「job tag」や「デジタル・ジョブ・カード」といった新たなインフラが整備され 、ミドルシニアであっても社外転進やリ・スキリングが当たり前となる時代へ。

 

第11次計画で培った「伴走する姿勢」はそのままに、私たちはより戦略的で、市場を見据えたキャリア支援へとアップデートしていく必要があります。

(コラム)キャリアコンサルタントを支える制度と政府の取り組み
1. 国家資格「キャリアコンサルタント」:キャリア支援の裾野を広げるための標準資格

国家資格の制定は、キャリア支援の担い手を全国的に増やし、誰もがキャリアコンサルティングを受けられる社会基盤を整えること(量の確保)を主な目的としています。

  • 根拠法と制度:

    • 職業能力開発促進法に基づき、2016年に創設された名称独占の国家資格です。
    • 資格取得後は、厚生労働省の「キャリアコンサルタント名簿」への登録が義務付けられています。登録しなければ「キャリアコンサルタント」と名乗ることはできません。
    • 専門性を維持・向上させるため、5年ごとの更新が必須であり、更新には最新の知識・技能に関する講習の受講が求められます。
  • 政府の取り組みと狙い:

    • 標準資格として、養成講習を修了すれば実務経験がなくても受験資格が得られるようにし、多様なバックグラウンドを持つ人材が参入しやすいように設計されています。
    • 登録・更新制度を通じて、国がキャリアコンサルタントの活動状況を把握し、継続的な学習を促すことで、資格の社会的な信頼性と質の維持・担保を図っています。
    • 現在、全国で8万人以上(2025年5月末時点)が登録しており、量の確保という目標は着実に進展しています。

2. 国家検定「キャリアコンサルティング技能検定」:専門性を高めるための上位資格

こちらは、既にキャリアコンサルタントとして活動している実務経験者の、さらなる専門性の向上(質の向上)を促すことを目的としています。

  • 位置づけと制度:

    • 国家資格「キャリアコンサルタント」の上位資格として明確に位置づけられています。
    • 技能レベルに応じて2級(熟練レベル)1級(指導者レベル)の2つの等級があります。
      • 2級: より的確な個人への相談支援能力(熟練レベル)を証明します。
      • 1級: 個人支援に加え、組織への働きかけや、後進の指導・育成(スーパービジョン)ができる指導者レベルの能力を証明します。
    • 受験には実務経験が必須であり、1級は特に長年の経験が求められるなど、専門性の高さを証明する検定です。
  • 政府の取り組みと狙い:

    • キャリアコンサルタントが目指すべきキャリアパスを明確化し、継続的にスキルアップを図るための目標として設定されています。
    • 特に1級技能士の育成を通じて、キャリアコンサルタント全体を指導・牽引できるスーパーバイザー層の養成を目指しています。これにより、キャリアコンサルティング業界全体の質の底上げを図る狙いがあります。

まとめ:政府の二段構えの政策

政府の取り組みをまとめると、以下のようになります。

  1. まず、国家資格「キャリアコンサルタント」制度で、一定の質を担保した担い手の裾野を広げ(量の確保)、社会の様々な場面でキャリアコンサルティングが提供される基盤を整える。
  2. 次に、国家検定「キャリアコンサルティング技能検定」を上位資格として設定し、熟練者や指導者を育成することで、全体の専門性を高め、質の向上を牽引する。

この「量と質」の両面からアプローチする二段構えの制度設計は、政府が推進する「人への投資」政策の中核として、労働者一人ひとりの主体的なキャリア形成を社会全体で支える体制を本格的に構築しようとする強い意志の表れと言えます。

メルマガ名:キャリコン試験対策メルマガ(第546号)
発行者  :夢ロープレ研究室
発行責任者:中島則生
発行会社 :ソーニョプランニング株式会社
夢ロープレ研究室ホームページ:https://career-c.sognoplanning.com/
(YouTube)夢ロープレ研究室チャンネル:https://tinyurl.com/2buq7p5w
公式LINE:https://lin.ee/erkyqbh
アーカイブ(直近10号分):https://archive.benchmarkemail.com/yume_roleplay
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