今日はシステマチックアプローチについて
さて、メルマガ第549号をお送りします。
 
本日はシステマチックアプローチについてです。
 
システマチックアプローチについての問題は毎回の試験で2~4問出題されており、確実に点数をとる分野です。試験問題としては、なかなか難問を作りづらい内容なので、大筋を覚えておけば確実に得点可能です。
 
この分野の問題はステップ毎に出題されます。過去問を3~5回分をピックアップしてやっておくことをお勧めします。
 
このシステマティックアプローチは、カナダ雇用移民の「個人雇用カウンセリング-システマティックアプローチ」の執筆を行ったベザンソン(Bezanson)とデコフ(Decoff)によって作られたものでです。ただ、この名前は出題されていないようです。
目次

  1. 【コラム】ロープレ試験で見られるポイントとは?
  2. システマティック・アプローチの流れ
  3. 【コラム】「システマティック・アプローチ」のメリット・デメリット
(コラム)ロープレ試験で見られるポイントとは?
~評価基準の裏にある本質~

キャリアコンサルタントのロープレ試験では、「基本的態度」や「関係構築力」といった評価項目が設けられています。これらの基準を意識するあまり、「うまくやらなければ」と過度に力が入ってしまう受験者も少なくありません。

 

もちろん基準は重要ですが、合否を分ける本質は、より深い部分にある「キャリコンとしてのあり方」そのものです。ロープレ試験は「演技力」を試す場ではなく、目の前の相談者に真摯に向き合う「専門家としての姿勢」を示すための機会であることを理解することが重要です。

 

1.「教える人」ではなく、「意図」を持った伴走者としての姿勢

試験官が注目する点の一つに、受験者が「教える人」になっていないか、ということがあります。良かれと思って知識や経験から安易にアドバイスをしたり、相談者を自身の判断で正しい方へ向けようとしたりする姿勢は、相談者の力を信頼していないことの表れと見なされる可能性があります。

 

キャリアコンサルタントに求められるのは、答えを「引き出す」伴走者としての役割です。そのためには、一つひとつの応答に明確な「意図」を持つ必要があります。意図のない機械的な応答は、対話の流れを不自然にし、相談者との信頼関係を損なう要因となります。

 

2.沈黙を恐れず、自身の「エラー」を修正する姿勢

面談中に訪れる「沈黙」を恐れ、不必要な質問を重ねてしまうケースが見られます。しかし、沈黙は相談者が内省を深めるための貴重な時間です。

 

多くの受験者が、「次に何を聞こうか」と考え、相談者への集中が途切れてしまいがちです。その結果、表情や声のトーンといった非言語的なサインを見逃し、応答の質を低下させてしまいます。重要なのは、自身の解釈を挟まずに相談者の話をあるがままに受け入れる受容的な姿勢と、自身の「思い込み」や「誤解」といったエラーを自覚し修正していくことです。この姿勢が、相談者との信頼関係の土台を築きます。

 

3.表面的な問題から、本質的な課題を捉える力

限られた面談時間の中で、相談者の表面的な「来談目的」から、その背景にある本質的な「主訴」へと焦点を移行させる「ギアチェンジ」が評価されます。これは専門家としての技量が問われる点です。

 

問題の核心には、相談者自身が気づいていない「認知の歪み」「思い込み」が存在することが多くあります。単に状況を把握するだけでなく、そうした思考パターンが問題にどう影響しているかを相談者自身が気づけるよう支援することが、専門家としての役割です。また、話が停滞した際には、過去の状況や未来のありたい姿などを比較対象として用いることで、相談者の視点を変え、気づきを促す展開力も重要となります。

ロープレ試験は単なるテクニックを評価する場ではありません。ロープレ試験に対する学びは、自身の無自覚な癖やエラーを発見し、それを修正していくための重要な学習プロセスです。こうした訓練を通じて本質的なスキルを身につけることが、合格への鍵となります。

「キャリコン学習ポータル:キャリコンのお役立ち情報」に本日のコラムに関する記事を掲載しています。当記事に対しかなり突っ込んだ説明をしていますので、興味がある方、ぜひご一読ください。

キャリアコンサルタント試験合格の重要な視点
~評価基準の先にある「専門家としての姿勢」とは~
https://career-c.sognoplanning.com/?page_id=2598
システマチック・アプローチの流れ

キャリアコンサルティングにおけるシステマチック・アプローチは、相談者との関係構築から始まり、問題の把握、目標設定、方策の実行、そして相談の終結と評価へと進む一連の体系的なプロセスです。

 

まず、カウンセラーは相談者との間に信頼関係を築き、相談者が安心して自己開示できる環境を整えます。次に、相談者の抱える問題や課題を多角的な視点から明確に把握します。その上で、相談者自身が望む具体的な目標を設定し、その目標達成に向けた具体的な方策を共に検討・選択します。

 

選択された方策を実行に移す際には、カウンセラーは相談者を支援し、進捗を確認しながら必要に応じて軌道修正を行います。最後に、相談の成果を評価し、相談者自身が今後のキャリアを主体的に歩んでいけるよう促して終結します。この一連の流れを通じて、相談者のキャリア上の課題解決と成長を支援します。

  1. カウンセリングの開始 
  2. 問題の把握
  3. 目標の設定
  4. 方策の実行
  5. 結果の評価
  6. カウンセリングとケースの終了

①カウンセリングの開始

温かい雰囲気の中で、クライエントが安心して話の出来る信頼関係、ラポール、リレーションづくりを行う。来談者中心療法の基本的態度(肯定的受容、共感的理解、自己一致)やマイクロカウンセリング技法のかかわり行動(傾聴の姿勢)などを用いている段階。
②問題の把握

 

来談の目的、何が問題なのかという主訴を明確にする。

問題にはクライエントの問題とカウンセラーが認識する問題が違う場合があるため、共有して確認を行う。

マイクロカウンセリング技法のかかわり技法(言語レベルの傾聴法)などを用いている段階。

③目標の設定

解決する問題を吟味して、最終目標を決定するプロセスです。まずクライエントに悩みや阻害要因に気付いてもらい、具体的ないくつかの方策を選択し、それらを一連の行動ステップに組み立てていきます。最終的にはクライエントとの間で契約(合意)を結びます。そのことによってクライエントのコミットメント(責任を伴う約束)を確かにすることができます。

  1. 目標の設定は、クライエントが自分の考えを方向付け、最終目標に向かって行動するのを援助する。
  2. 目標が明確に宣言され、かつ到達可能であるとき人を最も動機付ける。人は目標に近づけば近づくほど努力する。
  3. 目標設定によって、目標に照らしてカウンセリングの進展を客観的に測定、評価できる。
  4. 目標設定によって、カウンセリングを計画的、合理的に進めることができる。人間関係の質を高めるなどの抽象的な目標のために、カウンセリングをだらだらと長期間にわたって進める危険を少なくできる。
目標設定の5ステップ

ステップ1:目標を小さなターゲットとして表現してみる。

具体的で小さなステップごとにカウンセリングを進めることによって、クライエントは早い段階から成功感を味わえる。進捗状況を知ることができる。

ステップ2:カウンセラーはこのケースを扱えるかどうかを検討し、決定する。

すべてのカウンセラーは万能ではない。目標設定のプロセスの中で、カウンセラーは自分はこのクライエントの支援者として最適かを検討し、その結果をクライエントに伝える。不適の時は他のカウンセラーや関係機関にリファーする。

ステップ3:クライエントが自分と一緒に、目標を達成しようとしているかを確認する。クライエントはターゲット達成をどれほど望み、努力しているか。ターゲット達成のメリット、デメリットは何かなどを相互に確認する。

ステップ4:確認が得られたら「行動契約」を結び、プロセスと実行する内容が記載されている契約書を取り交わす。

ステップ5:各ステップのチェックを行う。

クライエントは十分にターゲットを理解したか。クライエントと共に努力したい意向を十分に伝えたか。クライエントは意欲に欠けてないか。ターゲットの契約内容について、理解の齟齬なく共有しているか。

④方策の決定、実行

方策とは:カウンセリングの目標を達成するための行動計画のことを言います。

方策の決定:目標達成のため、マイルストーンと具体的な行動を見つけ、決定します。

方策の実行:方策は以下の6ステップで進められます。

 

ステップ1

可能性がある方策をいくつか考え、メリット、デメリットを比較検討して1つ選ぶ。

 

ステップ2

方策実行のプロセスを、クライエントに説明する。方策の内容、目的、原理、プロセス、結果、利点と損失、必要な諸活動などを説明する。

 

ステップ3

クライエントに合うように方策を変更(見直し)する。

 

ステップ4

方策を実行し、達成するためにカウンセラーとクライエントが「契約」を結ぶ。これは具体的な行動、すなわち個々の方策を行うことを約束することでもある。(必要があれば契約書を取り交わす)

 

ステップ5

決定、採択された方策をクライエントが自分の責任で実行する。カウンセラーも自分の役割を実行する。

 

ステップ6

方策の実行全体をチェックする。

 

主な方策の種類
【1】意思決定
クライエントが意思決定することを支援する方策です。
  • カウンセリング・プロセスの中でクライエントは、受動的でなく積極的な役割を果たすことができる。
  • 1つを選択することは、他を捨てることである。何を捨てるかは、何を選ぶかと同様に重要である。
  • 意思決定には必ず不確実性を伴う。決定されたことは変わることがあるし、完璧性よりは可能性を重視すべきである。
  • 意思決定のタイミングは、その内容と同様に重要である
【2】学習 
クライエント自身が目標を立て、学習できるような状況を創り出し支援する方策です。支援する学習には以下の3つのカテゴリーがあります。
  • 技能(Skill)
  • 行動パターン(Action Pattern)
  • 意欲(Needs)
【3】自己管理 
カウンセラーへの依存ではなく、自分で問題を発見し、目標を定め、方策を選び、それを実行する進め方です。以下の3分野があります。
  • 自己監視(セルフ・モニタリング)
  • 状況の修正
  • 行動の学習

システマティックアプローチにおける職業情報提供の留意点

  • 原則としてクライエントが情報を自身で得る方法を教えること。
  • 自身の責任と行動で体験させること。
クライエントにとって否定的な情報は、一般的に受け入れられにくい。例えば就職を困難にしている習慣、観念、性格、高すぎる期待などの非現実性をクライエントが持っている場合である。この場合はカウンセラーから与えられる一般情報を基に、クライエントが自分の期待内容等を再評価し、現実に合わせていく「自己学習」をさせるのが良い進め方とされています。
⑤結果の評価

評価には以下4つの内容が含まれる。

  1. 目標に照らして、何処まで到達したか。
  2. クライエントの同意を得て、カウンセリングを終了する。
  3. カウンセラーはクライエントの成果を監査(モニタリング)する
  4. カウンセラーはこのケースについての結果、手段、スキルの行使などについて、自己および他人による評価を受ける。

※クライエントの成長評価の注意点

クライエントが成長したと感情で認識するのではなく、実際に行動が変わったという事実によること。

評価するのはカウンセラーや第3者ではなく、クライエント自身である。カウンセラーはその機会を提供し、クライエントの評価に耳を傾け、容認する。

⑥カウンセリングとケースの終了

 

成果と変化を相互に確認し、クライエントが了解すればケース終了。問題があれば再び戻ってこれることを告げる。ケース記録を整理し、カウンセリングを完結する。

※カウンセラーの自己評価を行う(システマティックアプローチ最終段階)

  1. 具体的な結果:就職した、訓練を受けることになった 等
  2. 質的な側面:自身がついた、就職活動をする気力が出た 等
  3. 将来への知識、スキル:将来活用できるスキルを身につけた 等
  4. システマティックアプローチの各ステップ踏襲度合いと結果の確認

◇クライエントの成長評価の注意点

 

クライエントが成長したと感情で認識するのではなく、実際に行動が変わったという事実によること。

評価するのはカウンセラーや第3者ではなく、クライエント自身である。カウンセラーはその機会を提供し、クライエントの評価に耳を傾け、容認する。

「システマティック・アプローチ」のメリット・デメリット

カナダで生まれた「システマティック・アプローチ」は、キャリアカウンセリングの技法で、現在の日本のキャリアコンサルティングの中心としてロジャーズの「来談者中心療法」と双璧になっています。

「システマティック・アプローチ」は従来の特性因子論的なマッチング(個人と職業の適合)だけでなく、個人の主観的な経験や価値観を重視する構成主義(ナラティブ・アプローチ)の考え方を取り入れているのが特徴です。

このアプローチには、主に以下のメリットとデメリットがあります。特にデメリットの部分は知って練習するのと、知らないで練習するのでは全く違ってくるものです。


<メリット>

 

最大のメリットは、体系化された支援プロセスと、クライエント(相談者)中心の深い理解を両立できる点です。

 

カウンセリングが場当たり的にならず、「関係構築」「問題の明確化」「自己探索」「意味の解釈」「意思決定」「行動計画」といった段階を追って(システマティックに)進められるため、カウンセラーもクライエントも「今どの段階にいるのか」を把握しやすく、迷走しにくい構造になっています。

 

また、単にスキルや適性を診断するのではなく、クライエントの「語り(ナラティブ)」に耳を傾け、その人固有の経験や価値観、キャリアに対する「意味づけ」を重視します。これにより、クライエントは表層的な職業選択ではなく、自分自身の人生の文脈(ライフキャリア)の中で納得感のあるキャリアを主体的に構築していくことができます。自己理解を深め、将来への展望を描く上で非常に有効なアプローチと言えます。


<デメリット>

一方、デメリットとしては、クライエントの深い内省や「意味」の再構築を促すため、比較的時間がかかる傾向があることです。「今すぐ辞めたい」「手っ取り早く次にやるべき仕事を知りたい」といった、即時的な解決を求めるクライエントにとっては、プロセスが冗長(じょうちょう)で、まどろっこしく感じられる可能性があります。

 

最も大きな課題は、カウンセラー側に高度な専門性が要求される点です。このアプローチは単なるマニュアルではなく、構造(システム)を用いつつも、クライエントの語りに柔軟に寄り添い、本質的な問いを投げかける「アート(技術)」的な側面が不可欠です。カウンセラーの傾聴力、質問力、そして構成主義的な理論理解が不足していると、単に手順をなぞるだけの形式的な面談に陥り、アプローチ本来の良さを引き出せない危険性があります。

メルマガ名:キャリコン試験対策メルマガ(第549号) 
発行者  :夢ロープレ研究室
発行責任者:中島則生
発行会社 :ソーニョプランニング株式会社
夢ロープレ研究室ホームページ:https://career-c.sognoplanning.com/
(YouTube)夢ロープレ研究室チャンネル:https://tinyurl.com/2buq7p5w
公式LINE:https://lin.ee/erkyqbh
アーカイブ(直近10号分):https://archive.benchmarkemail.com/yume_roleplay
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