「相談者の気持ちにもっと寄り添いたいのに、どんな言葉をかければいいんだろう…」 「会話が表面をなぞるだけで、なかなか深い話にならない…」
ロープレの練習を重ねる中で、ふと、そんな壁を感じることはありませんか?
今回は、そんなモヤモヤを吹き飛ばし、対話の質をぐっと深めてくれる、シンプルだけど奥が深い「関わり方」を一つ、ご紹介しますね。
■ 対話の鍵は「キーワード」を繰り返すこと
その関わり方とは、「キーワードの反復」です。
やり方は本当に簡単。相談者が話してくれた言葉、特に気持ちがこもっているなと感じるキーワードや、「これはご本人にとって大事な言葉なんだろうな」と感じる部分を、短い言葉でそっと繰り返すだけ。
例えば、相談者が転職活動の苦労を話している中で、こんな言葉が漏れたとします。
「あの時、本当に悔しかったんです。自分の無力さを感じて…」
ここで、すぐに次の質問をしたり、「頑張りましたね」と励ましたりする前に、一呼吸おいて、こう返してみてほしいのです。
「…本当に、悔しかったんですね…」
あるいは、
「…ご自身の無力さを、感じて…」
と、少し間をとりながら、静かに繰り返します。
■ ただの「オウム返し」と、何が違うの?
「え、それってただのオウム返しじゃないの?」と感じるかもしれません。でも、これが単なる相槌とは似て非なるものです。
キーワードを繰り返すことは、相談者の言葉を「鏡」のように映し出す行為に近いかもしれません。ご自身が発した言葉を、私の声を通して改めて聞くことで、相談者は「あ、自分はこんな風に感じていたんだ」とハッとすることがあります。ご自身の感情や考えの核心に、自ら気づくきっかけが生まれるのです。これが、自己探索を深めるための、とても大切な一歩になります。
そして、この関わり方にはもう一つ、大きな力があります。 それは、「あなたのその気持ちを、私はしっかりと受け止めて、大切にしていますよ」というメッセージを、言葉以上に深く伝えられることです。
評価や解釈を挟まず、ただ相手の言葉をそのまま返す。それによって相談者は「この人は、私のことを分かろうとしてくれている」と安心して、少しずつ心を開いてくれるようになります。
相談者の内省を促し、同時に信頼関係(ラポール)も深めていける。まさに一石二鳥のスキルです。
■ 練習で意識したい、ちょっとしたコツ
このスキルを効果的に使うには、いくつかコツがあります。
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感情が動いた言葉をキャッチする: 「悔しい」「嬉しい」「モヤモヤする」「ホッとした」など、感情が表れた言葉にアンテナを張ってみましょう。
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「間(ま)」を大切にする: 機械的に繰り返すのではなく、一呼吸おいて、心を込めて返すイメージで。その「間」が、言葉に重みを与えてくれます。
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使いすぎないこと: 会話の節目や、「今が大事な場面だな」と感じる時に使うことで、その効果が最大限に引き出されます。
試験対策のロープレ練習はもちろん、普段の何気ない会話でも、ぜひこの「キーワードの反復」を意識してみてください。この小さな一工夫が、あなたの傾聴の姿勢をより確かなものにし、相談者との対話を、もっと深く、意味のある時間に変えてくれるはずです。