本日から再スタートトップはドナルド・スーパーです
メルマガ第553号をお送りします .
 
今日は頻出理論家No.1のドナルド・スーパーです。

今回の第30回国家試験ではなんと出題されませんでした。29回では選択肢1個、28回でも大問1問だけでしたから、急激に比重が下がっています。次の第31回国家試験ではどう出るか?とは言っても過去の流れを見ると、決して無視できませんので、今回もリスタートのトップはドナルド・スーパーで行かせて頂きます。
目次
 
1.ドナルド・スーパー
2.スーパーのキャリア発達理論:14の命題を解説する

ドナルド・スーパー(1910〜1994)

 

まずは出題頻度No.1の大変な大御所からです。キャリア発達を中心に研究された方です、 覚えておく必要があるのは以下の7つです。

 

➀自己概念
②マキシサイクルとミニサイクル
③14の命題
④ライフキャリアレインボー
⑤アーチモデル
⑥ライフステージ(5つのステージ)
⑦ライフロール(9つの役割)

たくさんの概念があり混乱しますが、以下のような順番で理解していくと理解しやすいと思います。また、14の命題はスーパーの概念の一覧表のようなものです。その意味で試験前の総整理の時にはボリュームが凄いですが14の命題を読み込むことをお勧めします。

➀5つのライフステージは「マキシ・サイクル」と「ミニ・サイクル」で構成されている

②人は人生でいくつもの役割(ライフロール)を担っている。その役割は人生のどの位置にあるかによって異なることから、それを視覚的にとらえたのが「ライフ・キャリア・レインボー」。

③スーパーはその概念を晩年に「アーチモデル」を打ち出している。
自己概念(キャリア自己概念) 
 
自己概念とは主観的自己客観的自己が統合された概念です。
  • 主観的自己・・・・自分が自分自身の価値、興味、能力などに「主観的に形成してきた自己についての概念」
  • 客観的自己・・・・他者からの客観的なフィード・バックに基づき自己によって形成された自己についての概念
◇5つのライフステージ
<5つのライフステージ>
成長段階、探索段階、確立段階、維持段階、解放(衰退、下降)段階の5つの段階
マキシサイクルとミニサイクル
✅マキシサイクル
生涯を通じた発達段階をマキシ・サイクルと呼びます。
    ミニサイクル

    移行期に含まれるのがミニ・サイクルです。各発達段階の間には、移行期があり、移行期に行われる「再探索」「再確立」の過程をミニサイクルと呼びます。

    ライフキャリアレインボー
    学習ポータル連携企画「スーパーのライフ・キャリア・レインボー」

    キャリア理論の巨匠、D・スーパーが提唱した「ライフ・キャリア・レインボー理論」を、視覚的でわかりやすい特設ページで徹底解説しました。

    人生を構成する5つのステージと9つの役割とは?インタラクティブな図解で、複雑な理論も直感的に理解できます。ご自身のキャリアを振り返るきっかけにも、学科試験対策にも最適です。

    ▼詳しくはこちら https://career-c.sognoplanning.com/?page_id=2447

    ライフロール
    ライフロールは人の人生における役割を指し、以下の9つの役割で構成されています。上のライフキャリア・レインボーに役割が示されていますが、年を取るにつれライフロールの数は増えていき、徐々に変化していきます。
    • 子ども
    • 学生
    • 余暇人:余暇を楽しむ人
    • 市民:地域活動など地域貢献の役割
    • 労働者
    • 配偶者:妻・夫
    • 家庭人(ホームメイカー):自分の家庭を維持管理する
    • 年金生活者
    アーチモデル

    <アーチの左の柱>
    内的な個人的要因(心理学的特性)

     

    <アーチの右の柱>
    外的な社会環境的要因(社会・経済状況)
     
    柱に支えられたアーチ部分に「自己」、「役割」、「自己概念」、「発達段階」が記されています。

    職業的適合性
    スーパーは職業的適合性として、まず「能力」と「パーソナリティ」に分類しました。そして能力を「適性」と「技量」に分類し、パーソナリティを「適応」「価値観」「興味」「態度」に分類しました。
    過去問では対象が「能力」か「パーソナリティ」かを問うような問題だったので、パーソナリティの項目を覚えておけば消去法で解けると思います。
    スーパーの14の命題
     
    1. 人はパーソナリティの諸側面(欲求、価値、興味、特性、自己概念)および能力において違いがある。
    2. これらの特性から見て、人はおのおの多くの種類の職業に対して適合性を示す。
    3. それぞれの職業には、必要とされる能力やパーソナリティ特性の独自のパターンがある。職業に就いている人に多様性が見られるように、個人も多様な職業に就く許容性を有している。
    4. 職業に対する好みやコンピテンシー、生活や仕事をする状況は、時間や経験とともに変化し、それゆえ自己概念も変化していく。
      このような社会的学習の成果としての自己概念は、選択と適応において連続性を提供しながら青年期後期から晩年にかけて安定性を増していく。
    5. 自己概念が変化していくこのプロセスは、成長、探索、確立、維持、解放の連続としてみなされた一連のライフ・ステージ(「マキシ・サイクル」に集約され、また発達課題によって特徴づけられた期間へ細分化されうる。ミニ・サイクルは、あるステージから次のステージへキャリアが移行するときに起こる。または病気や障害、雇用主による人員削減、必要な人的資源の社会的変化、または社会経済的ないしは個人的出来事によって、個人のキャリアが不安定になるたびに起こる。このような不安定で試行錯誤に富むキャリアには、新たな成長、再探索、再確立といった再循環(リサイクル)が含まれる。
    6. キャリア・パターンとは、到達した職業レベルである。また試したものであれ安定したものであれ、経験した職務に従事した順序、頻度、期間を意味する。キャリア・パターンの性質は、各個人の親の社会経済的レベル、本人の知的能力、教育レベル、スキル、パーソナリティの特徴(欲求、価値、興味、自己概念)、キャリア成熟、および個人に与えられた機会によって決定される。
    7. どのライフ・ステージにおいても、環境と個体の要求にうまく対処できるかどうかは、これらの要求に対処する個人のレディネス(対処するために個人がどの程度準備できているか、すなわち、キャリア成熟)の程度による
    8. キャリア成熟は、心理社会的構成概念であり、それは成長から解放までのライフ・ステージおよびサブ・ステージの一連の職業的発達の程度を意味する。社会的視点からは、キャリア成熟は、個人の暦年齢に基づいて期待される発達課題と、実際に遭遇している発達課題とを比較することによって操作的に定義できる。心理学的視点からは、現在遭遇している発達課題を達成するために必要な認知的・情緒的資源と、個人が現在もっている認知的・情緒的資源とを比較することにより操作的に定義できる。
    9. ライフ・ステージの各段階をとおしての発達は、部分的には能力、興味、対処行動を成熟させること、また部分的には現実吟味や自己概念の発達を促進することによって導かれる
    10. キャリア発達とは、職業的自己概念を発達させ実現していくプロセスである。キャリア発達のプロセスは統合と妥協のプロセスであり、そのなかで、生まれもった適性、身体的特徴、様々な役割を観察したり担ったりする機会、役割をこなした結果を上司や仲間がどの程度承認しているかの自己認識との間の相互作用によって自己概念は作られる。
    11. 個人要因と社会要因間および自己概念と現実間の統合と妥協とは、役割を演じ、フィードバックを受けるなかで学習することである。その役割は空想やカウンセリング面接で演じられる場合もあれば、クラス、クラブ、アルバイト、就職といった現実生活で演じられる場合もある。
    12. 職業満足や生活上の満足は、個人の能力、欲求、価値、興味、パーソナリティ特性、自己概念を適切に表現する場をどの程度見つけるかによって決まる。満足感は、人がその役割をとおして成長し、探索的な経験を積み、自分にとって合っていると感じられるような類の仕事、仕事の状況、生活様式に身をおいているかどうかに拠る。
    13. 仕事から獲得する満足の程度は、自己概念を具現化できた程度に比例する。
    14. 仕事と職業は、たいていの人にとってパーソナリティ構成の焦点となる。しかし、仕事や職業が周辺的であったり偶発的であったり、全く存在しなかったりする人もいる。また、余暇や家庭といったほかの焦点が中心となる人もいる。個人差と同様に社会的伝統(性役割におけるステレオ・タイプやモデリング、人種的民族偏見、機会があたえられるかどうかという社会構造)が、労働者、学生、余暇人、家庭人、市民のうちどの役割を重視するのかの重要な決定要因である。

    スーパーのキャリア発達理論:14の命題を解説する

    I. 個人の多様性と職業への適合性 (命題1, 2, 3)

    1. 人はそれぞれ個性的 (命題1)
      • 解説:人は、性格(欲求、価値観、興味、特性)、自分自身についての考え方(自己概念)、そして持っている能力において、一人ひとり異なります。
    2. 多様な職業への適性 (命題2)
      • 解説:これらの個性や能力から見て、人はそれぞれ、一つだけでなく多くの種類の職業に向いている可能性を持っています。
    3. 職業の多様性と個人の許容性 (命題3)
      • 解説:それぞれの職業は、そこで求められる能力や性格のパターンが独自にあります。しかし、同じ職業に就いている人にも多様性が見られるように、個人もまた、多様な職業に就くことができる柔軟性を持っています。

    II. 自己概念の変化と安定 (命題4, 5)

    1. 時間と経験による変化 (命題4)
      • 解説:仕事に対する好みや、実際に仕事をこなす能力(コンピテンシー)、そして生活や仕事を取り巻く状況は、時間や経験とともに変わっていきます。それに伴い、自分自身についての考え方(自己概念)も変化します。
    2. 自己概念の安定化 (命題5)
      • 解説:社会の中で学び経験する中で形成される自己概念は、変化しつつも、青年期後期から晩年にかけて徐々に安定していきます。この安定した自己概念が、職業選択やキャリアへの適応において一貫性をもたらします。

    III. キャリアの段階的発達 (ライフステージとサイクル) (命題6)

    1. ライフステージとキャリアサイクル (命題6)
      • 解説:自己概念が変化していくプロセスは、一連の人生の段階(ライフ・ステージ)を経て進みます。これは大きく「成長、探索、確立、維持、解放」という「マキシ・サイクル」として捉えられます。各ステージには、その時期に達成すべき発達課題があります。
      • また、キャリアの転機(例:新しいステージへの移行、失業、病気など)には、「ミニ・サイクル」と呼ばれる小さなサイクル(新たな成長、再探索、再確立といった再循環)が起こります。これにより、不安定な状況を乗り越えようとします。

    IV. キャリアパターンとその決定要因 (命題7)

    1. キャリアパターンとは何か (命題7)
      • 解説:「キャリア・パターン」とは、その人が到達した職業上のレベルや、経験してきた仕事の種類、順序、頻度、期間などを指します。
      • 決定要因:このパターンは、親の社会的・経済的地位、本人の知的能力、学歴、スキル、性格特性(欲求、価値観、興味、自己概念)、キャリアに対する成熟度、そして与えられた機会など、多くの要因によって決まります。

    V. キャリア成熟 (命題8, 9)

    1. 環境への対処とキャリア成熟 (命題8)
      • 解説:人生の各段階で、周囲の環境や個人の内的な要求にうまく対処できるかどうかは、その人がどれだけ準備できているか(キャリア成熟の度合い)にかかっています。
    2. キャリア成熟の定義 (命題9)
      • 解説:「キャリア成熟」とは、心理社会的な概念で、人生の各段階(成長期から解放期まで)における職業的発達の度合いを示します。
        • 社会的視点: 個人の年齢から期待される発達課題と、実際に直面している発達課題を比較して評価します。
        • 心理学的視点: 現在直面している発達課題を達成するために必要な心構えや能力と、実際に持っている心構えや能力を比較して評価します。

    VI. キャリア発達を導くもの (命題10)

    1. 発達の促進要因 (命題10)
      • 解説:ライフステージの各段階を通じた発達は、一つには能力や興味を成熟させ、適切に対処する行動を身につけることによって、もう一つには現実を吟味し、自己概念を発達させることによって導かれます。

    VII. キャリア発達のプロセス:自己概念の実現 (命題11, 12)

    1. キャリア発達の本質 (命題11)
      • 解説:「キャリア発達」とは、自分自身についての職業的なイメージ(職業的自己概念)を形成し、それを実現していくプロセスです。
      • このプロセスは、生まれ持った才能、身体的特徴、様々な役割を観察したり経験したりする機会、そしてその役割をこなした結果を上司や同僚がどれだけ認めてくれているかという自己認識などが相互に作用し合う「統合」と「妥協」のプロセスです。
    2. 統合と妥協の学習 (命題12)
      • 解説:個人的な要因(自分の能力や価値観など)と社会的な要因(周囲の期待や現実的な制約など)の間、そして自己概念(こうありたい自分)と現実(実際の自分や状況)の間で折り合いをつけ、バランスを取っていくことは、役割を演じ、その結果からフィードバックを得る中で学んでいくものです。
      • この役割演技は、空想の中やカウンセリング場面だけでなく、学校の授業、クラブ活動、アルバイト、実際の就職といった実生活の様々な場面で行われます。

    VIII. 職業満足と仕事の位置づけ (命題13, 14)

    1. 職業満足と生活満足の源泉 (命題13)
      • 解説:仕事や人生における満足感は、自分の能力、欲求、価値観、興味、性格特性、そして自己概念を、仕事や生活の中でどれだけ適切に表現できる場を見つけられるかによって決まります。
      • 満足感は、人がその役割を通じて成長し、新しいことを試し(探索的経験)、自分に合っていると感じられる種類の仕事、職場環境、生活スタイルの中に身を置いているかどうかによってもたらされます。
    2. 自己概念の具現化と仕事の多様な意味 (命題14)
      • 解説:仕事から得られる満足の度合いは、自己概念(自分はこういう人間だ、こうありたいという思い)を仕事を通じてどれだけ具体的に実現できたかに比例します。
      • 多くの人にとって、仕事や職業は自分のパーソナリティを形作る中心的な要素となります。しかし、仕事がそれほど重要でなかったり、偶発的なものであったり、あるいは全く存在しない人もいます。そのような人にとっては、余暇活動や家庭生活などが人生の中心となることもあります。
      • どの役割(働く人、学生、余暇を楽しむ人、家庭人、社会の一員など)を重視するかは、個人の違いだけでなく、社会的な伝統(性別役割に関する固定観念や模範となる人の影響、人種的・民族的偏見、機会が与えられるかどうかといった社会構造)も重要な決定要因となります。

    まとめ

    スーパーの理論は、キャリア選択を一点の出来事としてではなく、生涯にわたる発達のプロセスとして捉え、その中心に「自己概念」を据えています。人は成長とともに自己概念を発達させ、それを仕事を通じて表現し実現しようとします。このプロセスは、個人の特性、社会環境、経験、そしてキャリア成熟度など、多くの要因に影響を受けながら、様々なライフステージを経て進んでいくとされています。

    スーパーはその他に「ライフスパン」「ライフスペース」という概念を導入しています。ただ、これは頻出事項ではないので余裕があったらで良いと思います。
    メルマガ名:キャリコン試験対策メルマガ(第553号)
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