シュロスバーグの転機理論の「4Sモデル」は、個人が人生の転機(トランジション)を乗り越える際に評価すべき4つの要素を示したフレームワークです。ロープレ試験において、相談者の状況を体系的に把握し、効果的な支援を展開するための強力なツールとなるので是非考え方を理解してください。
<国キャリロープレ試験への応用>
ロープレ試験の15分間では、ラポール(信頼関係)を形成し、相談者が何に困り、何を相談したいのかという主訴(中心的な訴え)と、その背景にある状況を的確に把握することが最優先となります。4Sモデルは、短時間で多角的な情報をバランスよく収集・整理するための「思考の補助線」として機能します。完全なアセスメントや解決策の提示ではなく、今後の支援に必要な基礎情報を得ることを目指します。
① 状況 (Situation) の把握:
まず、状況を最優先で取り組みます。「今日はどのようなご相談でしょうか?」「何があったのか、もう少し詳しく教えていただけますか?」といった問いかけで、相談者が直面している転機や問題の具体的な内容、発生時期、きっかけ、そして相談者がそれをどのように受け止めているかの「入口」を把握します。客観的な事実と主観的な認識の両方に耳を傾け、相談の焦点を明確にします。
② 自己 (Self) の理解:
状況と密接に関連するため、並行して聴取します。「そのことについて、今どのように感じていらっしゃいますか?」「〇〇(状況)は、ご自身にとってどのような意味がありそうですか?」など、状況に対する相談者の感情や受け止め方、自己認識への影響を中心に聴きます。
深い内省を促すというよりは、現在の感情や状態を理解し、共感的に受け止める姿勢を示すことが重要です。過去の経験や詳細な価値観に深入りする時間は通常ありません。
③ 支援 (Support) の確認:
相談者の孤立感を測り、利用可能なリソースを素早く把握するために軽く触れます。「その件について、どなたかにお話しされたりしていますか?」「周りの方(ご家族、ご友人、職場など)の反応はいかがですか?」といった質問で、現時点で相談者を支える存在がいるか、あるいは不足していると感じているかを概観します。詳細なサポートネットワーク分析ではなく、現状のサポート環境の概要を掴む程度に留めます。
④ 戦略 (Strategies) の扱い(留意点)
ロープレ試験が15分間という時間制約上、具体的な解決策や将来の行動計画を詳細に検討する段階には至りません。ここで「戦略」に触れる場合の目的は、「相談者が現時点で、この状況にどのように向き合おうとしているか」、「何か既に試したことや、最初に考えたことはあるか」 といった、現在進行形の対処や初期の考え方の傾向を把握することにあります。
例えば、「この状況に対して、何かご自身で考えたり、試されたりしたことはありますか?」といった問いかけは有効ですが、これは深い戦略立案のためではなく、相談者の主体性、リソース活用の状況、あるいは手詰まり感などを理解する手がかりを得るためです。決して解決策の提案や具体的な計画立案を急ぐものではありません。 もし相談者が自ら対処法に言及すれば、それを傾聴し、認識を深める程度に留めます。
<まとめ>
ロープレ試験15分間での4Sモデルの活用は、相談者との信頼関係を築きながら、「状況」「自己」「支援」を中心に情報を収集し、問題の全体像をバランスよく捉えることを主目的とします。「戦略」については、現時点での向き合い方を軽く確認する程度に留め、深い探索や解決策の提示は次回の面談に繋げるべき課題であることを念頭に置きます。このフレームワークを用いることで、短時間でも構造化されたアプローチが可能となり、的確な問題把握能力と共感的態度を試験官に示すことに繋がります。