2026年という節目を迎え、我々キャリアコンサルタントを取り巻く支援環境は、これまでにない大きな転換点を迎えています。
特に、職業能力開発の基盤となる職業情報提供サイト(job tag)は、単なる情報参照ツールから、国家戦略を支える動的なインフラへと進化を遂げました。
このコラムでは、2024年から2025年にかけての機能拡充と、今年度より本格始動した第12次職業能力開発基本計画におけるjob tagの戦略的役割について、専門的な観点から解説いたします
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1. 2024年から2025年における機能進化の総括
この2年間、job tagは従来の「職業情報のデータベース」という枠組みを超え、実効性の高いキャリア形成支援ツールとしての地位を確立しました。その進化は、主に以下の3点に集約されます。
まず、賃金情報の即時性と精度が劇的に向上しました。民間人材サービスとのデータ連携が深化し、ハローワークの統計値のみならず、個別のスキルや実務経験に裏打ちされた市場価値としての推定年収が可視化されました。これにより、クライエントに対し、より現実的かつ具体的なライフプランの提示が可能となりました。
次に、35項目のアビリティ(能力)指標の導入が挙げられます。職務内容の記述に留まらず、個人の能力を多角的に分析・照合できる仕組みが整ったことで、未経験職種への労働移動におけるポータブルスキルの有効性を論理的に立証できるようになりました。
さらに、デジタル分野においてはITSS+との完全な連動が実現しました。職務タスクが詳細に定義されたことで、リスキリングの具体的な目標設定が極めて容易になり、デジタル・トランスフォーメーション時代に即した支援体制が構築されました。
(補足)
ITSS+とは?「データサイエンスやDX(デジタルトランスフォーメーション)といった新たなデジタル領域において、実務上必要となるスキルを体系化した標準指標」
従来のITスキル標準(ITSS)が既存のIT職種を対象としていたのに対し、ITSS+は現代の急速な技術変化に対応するため、より具体的かつ専門的なタスクレベルでのスキル定義を行っているのが特徴です。キャリアコンサルティングの現場においては、クライエントのリスキリング(学び直し)の到達点を明確にするための「具体的な指針」として活用されています。
2. 第12次職業能力開発基本計画とjob tagの統合的役割
令和8年度より施行された第12次職業能力開発基本計画においては、個人の主体的・自律的なキャリア形成の促進が最優先課題として掲げられています。この国家指針において、job tagは以下の3つの機能を担う中核的拠点として位置づけられています。
第一に、スキルの公的証明基盤としての役割です。デジタルバッジやジョブ・カードとのシステム統合により、個人の学習履歴や習得スキルがjob tag上のデータと紐付けられ、キャリアの見える化が高度に実現されています。
第二に、円滑な労働移動の支援です。グリーン産業やデジタル産業といった成長分野への移行を促すべく、職種間のスキルの近接性をAIが精密に算出します。これにより、ミスマッチを最小限に抑えた戦略的なキャリアチェンジの支援が可能となりました。
第三に、セルフ・キャリアドックにおける標準診断ツールとしての活用です。企業内におけるキャリア形成支援において、客観的な統計データに基づいた自己理解を促すための「標準的な物差し」としての役割が、これまで以上に強化されています。
3. キャリア支援の専門家に求められる高度な伴走支援
現代のキャリアコンサルティングにおいて、job tagは単に情報を提示するための道具ではありません。膨大なデータとAIによる分析結果を、コンサルタントがどのように解釈し、クライエントの意思決定に結びつけるかという専門的知見が問われています。
2026年の支援現場に求められているのは、高度なテクノロジーが導き出す客観的なデータと、目の前のクライエントが歩んできた固有の物語(ナラティブ)を高い次元で統合させることです。データはあくまで地図に過ぎず、その道をどのように歩むかを共に考え、納得感のある選択を支えることこそが、我々専門家の真価であると言えるでしょう。
進化したjob tagを自らの専門性と融合させ、より質の高い支援を実践されることを期待いたします。