面接の中で「今日は驚くほどスムーズに話が進んだ」「深いレベルで通じ合えた」と感じる瞬間はありませんか?逆に、どんなにスキルを駆使しても、なぜか距離が縮まらない……。
これまで、こうした「手応え」の正体は、個人のセンスや直感、あるいは「相性」という言葉で片付けられてきました。しかし最新の脳科学は、この目に見えない現象に対人脳同期(IBS)という明確な答えを与えています。
ラポールは、脳の「Wi-Fi接続」
「ラポールが築けている」とき、二人の脳内では何が起きているのか。 実は、支援者とクライアントの脳波や血流といった脳活動は、まるで一つのネットワークのように同期(シンクロ)していることが分かっています。
特に熟練の支援者は、セッションの序盤から、相手の意図を推論する脳領域を素早く相手に「チューニング」させています。つまり、ラポールとは抽象的な雰囲気ではなく、脳同士が通信プロトコルを合わせ、接続に成功した状態なのです。
「聴く」ことは、脳の高速シミュレーション
また、「傾聴」についても面白い発見があります。 深い傾聴ができているとき、聴き手の脳はただ受動的に音を拾っているわけではありません。むしろ、相手の言葉やトーンから「次に何を言おうとしているか」を脳内で高速シミュレーション(予測)しています。
プロの傾聴とは、相手の心の地図を、自分の脳というキャンバスにリアルタイムで先回りして描き写し続ける、極めてダイナミックな情報処理プロセスなのです。
なぜ「自己一致」が必要なのか?
ロジャーズの説いた「受容」や「自己一致」も、脳科学で見れば合理的です。 支援者が安定した状態で「受容」することで、乱れたクライアントの脳波を整える外部脳として機能します。
また、支援者の心が裏表のない「自己一致」の状態にあることは、通信ノイズを減らすことと同義です。ノイズがないからこそ、脳同士は深く、速く、同期できるのです。
「感覚」を「確信」に変える
私たちのスキルは、決して非科学的なものではありません。 「自己一致」というリズムを整え、「傾聴」というアンテナを研ぎ澄まし、「受容」によって共鳴する。その結果として「脳の同期」が起き、クライアントに変化が生まれる。
このメカニズムを知ることで、これまでの「なんとなく」が「確信」に変るはずです。 今日も、目の前のクライアントと「脳レベルでの対話」を楽しんでいきましょう。