アメリカでキャリアカウンセリングの第一線に立ち続けてきたサニー・ハンセン。彼女の理論を語るうえで欠かせないのが、インドでの体験です。
現地を訪れたハンセンが目の当たりにしたのは、家族や地域社会のつながりが、人々の生き方や職業選択に深く根ざしているという現実でした。アメリカ社会では「個人が自由に選択するもの」と捉えられがちなキャリアが、インドでは家族の期待、地域の慣習、人生における役割と切り離せないものとして存在していたのです。
この経験はハンセンに大きな問いを突きつけました。「キャリアとは、本当に個人だけの問題なのか」——その問いへの答えが、後の理論的基盤となっていきます。
彼女はやがて、仕事という一側面だけで人生を語ることの限界に気づきます。人が生きるうえでは、愛(人間関係)・労働(仕事)・余暇(休息や趣味)・学習(成長)という四つの要素が複雑に絡み合っており、それらを統合的に見つめることが、豊かな人生設計につながると考えたのです。
こうして生まれたのが「統合的生涯設計(Integrative Life Planning)」という概念です。文化や社会的背景を踏まえながら、人生全体を視野に入れてキャリアを描く——その発想の原点には、インドという異文化との出会いがありました。