【3.今後求められる民間英語学校の役割について】
アプリコット出版では時折学会に参加して英語教育現場の実践を知るように努めていますが、そんな中、ある大学の先生が「民間の先生は学校の先生に比べて生徒の目線に立つセンスに長けていて、発想が自由で豊か」と仰っていました。
具体的には、
- 予定通りに授業が進まない時、指導案通りに推し進めようとせず1年スパンでフレキシブルな対応をする
- 即興で替え歌やチャンツを作ったりして授業にメリハリと楽しさがある(テキストのチャンツの替え歌のようなものを駆使して間違いやすい文法や例外的なものを覚えるコツを伝授する等)
- 生徒に対峙する姿勢が「何でも知ってる英語の先生」ではなく「先生も知らないことはある」というスタンスで、子供達との間に安心感や信頼関係がある…というようなお話でした。
アプリコット出版のコースブックLearning World の著者、
中本幹子先生は「レッスン中に一瞬でもよいので1人1人が主人公になれる時間を(意図的に)作る」と常々仰っています。日本では教室の外に1歩出れば日本語で全てが通じるので、毎回のレッスンの中で「英語を使わせる」必要がある。そのためには子供達の心をいかにオープンにさせるかが大事で、先生は恐れ多い存在でない方が子供達が安心して英語を話し始めるということを民間英語学校の先生方は経験的にあるいは直観的に、よくご存じなのだと思います。
民間英会話スクールが学校教育と大きく違うのは、少人数がゆえに子供達個々に目が行き届くことです。幼児の時から8~10年かけて言語としての英語をじっくり育むことができるのは民間ならではです。学校教育では足並みを揃えることを求められがちですが民間では1人1人違って当然。個に合わせて長いスパンで指導をすることができます。
今後は正課化に向けた授業時間数の増加により、これまで以上に公立小学校で大量のインプットが可能になり、多くの小学校で絵カードや歌を駆使し、ビンゴやフォニックスが盛んになると思われます。だからこそ、民間英語学校ではインプットで終わらないレッスンを今まで以上に意識することが大切です。大勢でもできる楽しいインプットとインテイクによって、英語を「聞いてわかる」でとどまるのではなく、生徒が間違いながらも(実技科目なのだから間違うのは当然)自分のことを英語で言い、教師の励ましと小さな成功体験によって「使える英語」を増やし、「必要な場面で、それまでストックされていた英語が子供達の口からツルッと出る」ようにすることです。(⇒100以上の日常表現を瞬間的にツルッと言えるようにするアイテム、ダイアログカードは
こちら。)
そのためにお勧めしたいことが3つあります。
- クラスで毎回生徒達とchatする。(リスニング力が強化され、英語を使う場にもなります)その際、カタカナ語化していて類推しやすい語彙と、習った語彙や表現を意識して入れます。(文部科学省はSmall Talkと銘打って「ある程度まとまった英語で生徒とやりとりする」ことを5,6年生でおこなうことを打ち出しています。)
- ペアやグループで協力しながら英語を使って何かを達成する活動をする。クラスメイトと協力して課題(英語を使わなければ解けない活動)を解決することで小さな成功体験が積み重なっていきます。その時、楽しい活動、チャレンジングな活動、ハードルを高くした活動があると、さらに記憶が強く残ります。⇒英語を使うカラー教具は
こちらから。
- レッスンの中で子供達がどれだけ英語を使っているか、に意識を向けてみる。「英語を使うのは子供達」です。先生からの質問に簡単な英語で答えさせるだけでなく、英語を生徒が使う場面を意識的に作ることがとても大切です。高学年になってもチャンツや歌、語彙の復唱が主で、生徒から出てくる自然な英語は挨拶とOK.だけ、の場合は再考の余地があります。
英語は実技科目です。ピアノやスポーツと同じです。試合で勝ちたいと思っていない選手に練習させても身が入らないのと同じで、英語授業は生徒に知識を教えるだけでなく動機づけを与えること、具体的には間違いながらも「言えた、通じた」達成感を重ねて「もっと英語を喋れるようになりたい」と思わせられることが大切です。
先日参加した1/13の学会で、ある中学の先生が毎回授業でAny questions? What do you think? と質問をし続けていたら半年すぎた頃から生徒がポツポツと英語を話すようになってきたと発表していました。生徒達の反応は「最初は本当に大変⇒だんだん理解できるようになってきた⇒「わかる」ことが嬉しくて今はやりがいがある」、と変わってきたとのことでした。簡単に諦めないこと。生徒が変わってきた、と感じるまでに半年から8か月かかる、と強く仰っていました。「諦めず継続すること、待つこと。」これが最も大変で、大事なことなのかもしれません。
【参加した主な学会】
- 第22回 神奈川大学英語教育研究大会 2018.12/16
- 英語授業研究学会関東支部第237回例会 2019.1/13