そんな環境で育ったからか
裸足で走ることに特別な抵抗感はありませんでした。
むしろ、シューズに守られていたのでは
自分の弱点が見えなくなるし
人間本来の走りなんて分かるはずがない
という思いの方が強かったです。
それからは、裸足で走ることに没頭しました。
最初はジョギングで少しずつ慣らして。
今でこそそんなことはなくなりましたが
陸上競技場のトラックをゆっくりジョギングするだけでも
最初は足の裏の皮がむけたりしていましたから
相当雑な走りだったんでしょう。
それから少しずつ、シューズを履いていたときと同じように
400mや1000mのインターバルを始めました。
タイムも、400mだったら70秒とか
1000mだったら3分だったり。
もっと筋肉痛が出るものだと思ってたので
意外に足へのダメージが小さかったのにはびっくりしました。
ただ、競技場でのインターバルは
問題なくできるようになってきましたが
ロードになると、路面の凹凸に気を取られながら
少し窮屈に走っていました。
そして・・・
僕は大きな課題に直面しました。
職場の近くの道路をジョギング中のこと。
その時はペースを上げるということもなく、ゆっくり走っていたのに
なぜか左のふくらはぎがすごく張ってきたのです。
「おかしいなぁ・・・」と思いつつ
そのまま走っていたら
急に左ふくらはぎにピリッとした痛みが走りました。
懐かしくも忌々しい、あの、箱根駅伝の直前に起きた
肉離れと同じ症状でした。
その日はもう無理をせず、歩きながらトレーニングを終えました。
そして次の日、ストレッチをしても痛くなかったので
「何だ、昨日のは気のせいだったのかな?」と
また走り出したら、今度は前日よりも強い痛みが・・・。
無理をしてはダメだなと思い、1週間ほど休みました。
すると症状はだいぶ改善したので
またゆっくりしたペースのジョギングから始めました。
もちろん、裸足で。
すると今度は、反対の右ふくらはぎに同じ症状が出たのです。
正直、信じられませんでした。
仕方がないので、また1週間ほど休んで
ストレッチをしても痛みが出なくなってから走り始めました。
すると、なんと、今度はまた左のふくらはぎに痛みが・・・
もう、何が何だかわからなくなりました。
何でなんだ・・・???
「本当は、裸足って良くないのかな?」
そう思ったことは一度や二度ではありません。
以降半年間
ふくらはぎの肉離れを左右3往復も繰り返してしまいました。
しかし、このことがあって僕は気づくことができました。
裸足で走ることが
そのまま自動的にランナーの故障を改善するのではなく
(もしかしたらそういう場合もあるかもしれませんが)
裸足で走るメリットのひとつは
人間としてあるべき体の使い方ができてるのかどうかを
身を以て知ることができるということ。
僕はこのサインを元に
できるだけふくらはぎから目を離し、考えないようにしました。
それでもやっぱり
痛みが出る度に心は折れそうになります。
でもその度に
ふくらはぎの肉離れは
ふくらはぎに問題があるから起きているのではないはず!
この症状の根源は
ふくらはぎではない他のどこかにあるはずだ
そう信じてシューズを履かずにトライを重ねました。
そして、僕の仮説は的中しました。
ふくらはぎの肉離れループに
3往復目で終止符を打つことができたのです!
最初は恐る恐るでしたが
3日走っても、2週間走っても痛みが出てこない。
僕に足りなかったのは、これだったんだ!
飛び跳ねて喜びました。
それと同時に、僕がこのケガで気づいたある動きは
ふくらはぎだけではなく
ランニング傷害全般の解決策としても必須であると仮定し
治療の現場で応用すると、患部を触ることなく
痛みが改善する症例がほとんどであることがわかりました。
この、ふくらはぎの肉離れから気づいたことは
胴体を使って走ること。
胴体の動きと四肢の動きの関係をリノベーションすることなんです。
これができていなかったから
何度も何度も肉離れを繰り返すことになったのでしょう。
また、このリノベーションがうまくいってからは
ケガを改善するだけではなく
パフォーマンスアップという面でも大きな成果を
上げることができました。
2010年9月から裸足で走り始め
紆余曲折ありながらも「胴体を使って走る」ということに気づき
トレーニングを積み重ねて出た2012年の東京マラソンは
2時間50分21秒。
初めてのサブスリーは「ビブラム・ファイブフィンガーズ」という
五本指のシューズを履いてレースに出場しましたが
後半のペースダウンはほとんどなく
歓喜のゴールを迎えることができました。
そして、迎えた2012年の湘南国際マラソンにて
裸足で2時間45分39秒でゴールできたわけです。
ちなみに、シューズを履いて走ったマラソンのベストタイムは
3時間7分ですから、シューズを履いたベスト記録よりも
裸足で走った方がタイムが速い・・・。
※写真は上から2008年(シューズ)、2009年(シューズ)
2012年のタイムと、そのゴールの瞬間 |