前回、伝え方の型の話を書きました。
事実を伝える。
気持ちと、
大切にしているものを伝える。
してほしいことを伝える。
受け入れてもらえなかったときのことも、
考えておく。
ただ、型を知っても、
言えない場面があります。
伝える順番も分かっている。
言葉も、頭の中にはある。
それでも、言い出せない。
今日は、その話です。
前回の例で言えば、こうです。
「次に日程を決めるときは、
LINEで一言、
私の都合も聞いてもらえると嬉しい」
このお願いが、口に出せない。
言おうとした瞬間に、
思ってしまうのです。
そんなことを頼んだら、
面倒な人だと思われる。
この歳になって、
寂しかったと言うのは恥ずかしい。
みんな忙しいのに、私の都合で。
つまり、言えないのではなく、
言うことを自分に許していないのです。
お願いすることは、
わがままではありません。
寂しいと感じることは、
子どもっぽいことではありません。
頭ではそう分かっているのだと
思います。
でも、どこかで自分に禁じている。
長くそうやってきた人ほど、
禁じていること自体に気づきません。
この連載の最初に、
正論の話を書きました。
正しさで身を固めたくなるのは、
間違っている自分を
認めたくないからだ、と。
正しさで守るのも、
お願いが言えないのも、
同じところから来ています。
間違う自分を許していないから、
正しさで守る。
望みを持つ自分を許していないから、
お願いが言えない。
自分に許していないものが、
正しさになって出るか、
言えなさになって出るか。
形が違うだけです。
だから、言えるようになるには、
順番があります。
先に、許すことです。
寂しいと感じる自分がいる。
それを、恥ずかしいことでも、
子どもっぽいことでもなく、
ただそう感じているのだと
認める。
そこまでできて、はじめて
「寂しかった」は
口に出せる言葉になります。
自分で恥じている気持ちを、
相手に言えるはずがないからです。
お願いも同じです。
人に頼る自分を、
迷惑な存在だと思っているうちは、
お願いの言葉は出てきません。
頼ってもいいのだと
自分に許せたとき、
「聞いてもらえると嬉しい」が、
ようやく言えるようになります。
そして、
自分に許せた人は、
相手にも許せるようになります。
自分に禁じているものは、
相手がやっていると
気になります。
逆に、自分に許せたものは、
相手がやっていても
引っかからなくなります。
自分の不完全さを引き受けた人が、
相手の間違いに
正しさで迫らなくなるのは、
そのためです。
今日の一問です。
言いたいのに言えなかったとき、
飲み込んだ言葉より先に、
確かめてほしいことがあります。
私は、
自分に何を許していないんだろう。
すぐに答えは出ないと思います。
長く禁じてきたものほど、
見えにくいからです。
それでも、
この問いを覚えておくと、
言葉を飲み込んだ瞬間に
気づけるようになります。
いま私は、
これを言うことを
自分に許していないのだな、と。
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