Linking: /t/ as glottal stop: /ʔ/

英語発音Q-A:
etc.にまつわるエトセトラ

先日、etc. (et cetera)の発音について質問を受けました。

etc. が / et ˈset(ə)rə /ではなく / ek ˈset(ə)rə /と発音されるケースを耳にしますが、なぜスペリングでも明らかに tであるところが /k/になるのでしょうか?.

確かに、例えば Longman Pronunciation Dictionary, 3rd Edition (LPD)には "a pronunciation variation that is not considered correct"を表す記号とともに ⚠︎ ek ˈsetrəが記載されており、 Oxford Dictionary of English, 3rd Edition (ODE)には以下のような興味深い記述が見られる:

A common mispronunciation of et cetera involves replacing the t in et with a k. This follows a process known as assimilation by which sounds become easier for the speaker to articulate. (太字斜体は原文・下線はガリレオによる。)

このことから、規範的な発音からすると "mispronunciation" / 非標準的の扱いにはなるが、ある程度多くの話者に広まっている発音であるといえよう。

■ "ASSIMILATION"に対する疑問

上に挙げた ODEによれば、 etc.における /t/ → /k/の発音変化は assimilation(同化)の結果ということなのだが、ここには少し疑問が残る。

本来、assimilationで /t/→/k/となる環境としてまず思い浮かぶのは以下のような場合である:

  • that cup /ðæk kʌp/
  • that girl /ðæk gɜːl/

etc. ( et cetera)は摩擦音 /s/が後続する環境であるため、この場合にも /t/→/k/が生じるのか?というのが疑問であり、手元にある専門書を見る限りでは、この手の "assimilation"が明確に記述されているものは見当たりませんでした。

また、/t/と/s/の調音位置を考えると、両者ともに alveolar歯茎音:/t/は無声歯茎閉鎖音・/s/は無声歯茎摩擦音)であり、/t/→/k/の音変化はむしろ dissimilation(異化)なのではないかとも考えられる。

【参考】:Quoraにおける こちらのスレッドで dissimilationに言及があり。また、 Understanding Language Changeという本で、 / ek ˈset(ə)rə /の発音は dissimilationによるとの記載があるようです(Google Booksの検索でヒット)。

■ 声門閉鎖音 [ʔ]なら…

Seattle Learning Academyという英語スクールが運営する pronunciation.comというサイトによれば、「母音+/t/に摩擦音が後続する」という環境で、/t/が glottal stop(声門閉鎖音)[ʔ]に変化するという記述がありました:

Linking: /t/ as glottal stop: /ʔ/
一番上の流れ (pet snake)を参照

LPDにも、以下の環境で声門閉鎖音 /ʔ/が /t/の異音として生じると説明されている:

  • 音節末であり、かつ
  • /t/の前の音が母音または共鳴音 (sonorant)
    • 例: outside / ˌaʊt ˈsaɪd / → / ˌaʊʔ ˈsaɪd /

ガリレオ自身の発音を自問してみると、例えば "It seems..."と言う時に /t/で舌先を上歯茎に接触させるよりも、声門閉鎖を使った方が /s/への移行が楽に感じられました。
etc.は /t/でも /k/でも個人的には発音のしやすさにあまり変わりないような…σ(^_^;)

声門閉鎖音 /ʔ/と軟口蓋閉鎖音 /k/は異なりますが、口の奥側〜喉で閉鎖が作られるという意味では「似ている」と言っても良いでしょう。

暫定的な結論としては、「母音 + /t/ + 摩擦音」の環境で、/t/ → [k] ~ [ʔ]にした方が発音しやすいと感じる話者が存在する…という程度のことは言えそうです。

☆Here is the Path to Wonderland★

「渚にまつわるエトセトラ」に関わる重大な問題なので、Puffyを愛する英語学者としては放っておくわけにいかないのです (v)○¥○(v)

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