他力多読

Winnie-the-Pooh
新訳・解説プロジェクト始動!

■ クマのプーさんがパブリック・ドメイン入り

2017年5月21日、Winnie-the-Pooh (A. A. Milne, 1926)の著作権保護期間が切れ、public domainとなりました。(参考: 「くまのプーさん:新たなる旅立ち」, 福井健策, 2017, 骨董通り法律事務所コラム)

これを受けて、「100エーカーの森の道案内人」として、ガリレオもいざ名乗りをあげることにしました。ミルンによって紡ぎ出された原文の魅力を楽しみながら存分に味わっていただけるように、年明けから翻訳および英文解説の執筆を少しずつ進めているところです。いずれは正式に世に問えるものにできるようにと考えています。

ちょうど昨年、筑波大学大学院の恩師の一人である安井泉先生が 『対訳・注解 不思議の国のアリス』を上梓され、自分としても挑戦してみたいという想いが湧き上がっていたところに、個人的に思い入れのある作品でもある Winnie-the-Poohが(更に20年延長されることなく)public domain入りしたとなれば、これはやるしかないでしょう。

Pooh_image

■ INTRODUCTION ガリレオ訳

今回の記事では、「まえがき (Introduction)」の対訳部分を紹介します。

 し、きみが、どこかで、クリストファー・ロビンのことについて書かれたもう一冊の本を読んだことがあるなら、彼がかつて白鳥を飼っていて(それとも、白鳥のほうがクリストファー・ロビンを飼っていたのかな?)、その白鳥のことを「プー」と呼んでいたのを覚えているかもしれないね。

 If you happen to have read another book about Christopher Robin, you may remember that he once had a swan (or the swan had Christopher Robin, I don’t know which), and that he used to call this swan Pooh.

それはずいぶん前のお話で、わたしたちが白鳥にさよならをしたとき、「プー」という名前だけは連れてきたのさ。白鳥は、もう「プー」って名前はいらないだろう、と思ったからね。

That was a long time ago, and when we said good-bye, we took the name with us, as we didn’t think the swan would want it any more.

さて、今度はクリストファー・ロビンのテディ・ベアが、「なにか、呼ばれたら嬉しくなるような、ぼくだけの名前がほしいなぁ。」って言ったんだ。すると、クリストファー・ロビンは、ちょっと考えてみるなんてこともしないで、すぐに、「ウィニー・ザ・プーにしよう。」と言って、そういうことに決まったんだ。

Well, when Edward Bear said that he would like an exciting name all to himself, Christopher Robin said at once, without stopping to think, that he was Winnie-the-Pooh. And he was.

さて、これで「プー」って名前の部分は説明したわけだから、今度は残りの「ウィニー」の方のお話をしていくよ。

So, as I have explained the Pooh part, I will now explain the rest of it.

 ンドンにしばらくいれば、誰だって動物園に行きたくなるよね。世の中には、動物園に行っても、「入口」って書かれたはじめのところから歩き始めて、どの動物のオリもできるだけ速く通り過ぎてしまっては、「出口」ってところまで行き着いてしまう人もいるけど、本当に良い人というのは、まっすぐにいちばん大好きな動物のところに行って、ずうっとそこにいるものなんだ。

 You can’t be in London for long without going to the Zoo. There are some people who begin the Zoo at the beginning, called WAYIN, and walk as quickly as they can past every cage until they get to the one called WAYOUT, but the nicest people go straight to the animal they love the most, and stay there.

だから、クリストファー・ロビンが動物園に行くときは、ホッキョクグマのところに向かうってわけ。そして左から3番目の飼育員さんに何かささやくと、ドアを開けてもらえるから、暗い通路や急な階段をクネクネと進んで行って、やっと、あの特別なオリの前にたどり着くんだ。そのオリも開けられると、のそっと出て来るのが、茶色いモコモコしたやつで ー「やぁ、クマさん!」と嬉しそうな声をあげると、クリストファー・ロビンは、その腕の中に飛び込んで行くんだよ。

So when Christopher Robin goes to the Zoo, he goes to where the Polar Bears are, and he whispers something to the third keeper from the left, and doors are unlocked, and we wander through dark passages and up steep stairs, until at last we come to the special cage, and the cage is opened, and out trots something brown and furry, and with a happy cry of ‘Oh, Bear!’ Christopher Robin rushes into its arms.

で、このクマの名前が「ウィニー」って言ってね。だから、この名前が、どんなにクマにぴったりなのか、わかってもらえたでしょう。でも、おかしいなぁ。「プー」が先で「ウィニー」って名前をつけたんだっけ、それとも「ウィニー」が先で「プー」だっけ?前はちゃんと知っていたんだよ。でも、もう忘れちゃってね…

Now this bear’s name is Winnie, which shows what a good name for bears it is, but the funny thing is that we can’t remember whether Winnie is called after Pooh, or Pooh after Winnie. We did know once, but we have forgotten. . . .

 こまで書いたところで、コブタのピグレットがこちらを見あげて、「ぼくのことは?」って、かん高いキイキイ声で聞いてきたよ。

 I had written as far as this when Piglet looked up and said in his squeaky voice, ‘What about Me?’

だから、「ねぇピグレット」と呼びかけて、「この本ぜーんぶに、君のことが書いてあるんだよ。」と答えてあげたんだけど、「でも、これプーの本なんでしょ?」って、キイキイ声ですぐ言い返してきたんだ。

‘My dear Piglet,’ I said, ‘the whole book is about you.’ ‘So it is about Pooh,’ he squeaked.

わかるよね。ピグレットはヤキモチをやいているのさ。この「だいじなまえがき」を、プーにひとりじめされたと思ってね。

You see what it is. He is jealous because he thinks Pooh is having a Grand Introduction all to himself.

もちろん、プーはクリストファー・ロビンのいちばんのお気に入り。それを「ちがうよ」と言うことはできないけど、それでも、プーではいけなくて、ピグレットの出番になるようなこともたくさんあるんだよ。だって、みんなに気づかれないように、こっそりプーを学校に連れて行くなんてことはできないけど、ピグレットなら小さいから、するっとポケットに入れちゃうもんね。そして、「7かける2は12だったっけ、22だったっけ?」と、よくわからなくなったとき、ポケットの中のピグレットに触ってみれば、どんなに心が落ち着くだろう。

Pooh is the favourite, of course, there’s no denying it, but Piglet comes in for a good many things which Pooh misses; because you can’t take Pooh to school without everybody knowing it, but Piglet is so small that he slips into a pocket, where it is very comforting to feel him when you are not quite sure whether twice seven is twelve or twenty-two.

ときどき、ピグレットはポケットからするっと抜け出して、インクつぼの中をじーっとのぞきこんだりもするから、そんなわけで、プーよりも高い教育を受けているってことになるんだ。もっとも、プーは気にしてないけどね。知恵を持つのもいるし、持たないのもいる、とプーは言うんだ。そういうものさ。

Sometimes he slips out and has a good look in the ink-pot, and in this way he has got more education than Pooh, but Pooh doesn’t mind. Some have brains, and some haven’t, he says, and there it is.

 ぁ、他のみんなも言いだしたよ、「ぼくたちのことは?」って。だから「まえがき」はこのくらいにして、お話にとりかかる方が良さそうだね。

 And now, all the others are saying, ‘What about Us?’ So perhaps the best thing to do is to stop writing Introductions and get on with the book.

※拙訳;本記事掲載の訳は、推敲の上、加筆修正を施す可能性があります。

★HERE IS THE PATH TO WONDERLAND☆

それにしても、平昌オリンピックでの羽生結弦選手の演技の後、プーさんが降ってましたねぇ…( ̄▽ ̄;)

さて、当メルマガ購読者の皆さんには、「まえがき」の英文解説原稿(PDF)をプレゼントいたします!「まえがき」とは言え、11ページに及ぶ綿密な注釈で上の英語表現を分析しています(以下のサンプル画像参照)。

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Winnie-the-Pooh_Introduction_sample
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